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 昨晩。
 Tちゃんのバーで飲んでいたときにタオやちびっちょの話しをしていた影響か、亡くなってからはじめてタオが夢にでてきてくれた。

 亡くなってしばらくは、寂しくて、早く夢に出てきて欲しいと思っていたけれど、悲しみが強いうちは夢には出てこないもんだと教わった。

 

 どこかの高原の家。

 タオの姿が見えないので、外に向かって
「タオーーーーーーー!」
 と呼ぶと、なんだか分からないが大きな熊の親子が近づいてきた。

 咄嗟に
「危ない。タオがいま帰ってきたら熊にやられちゃう!」
 と思ったが、しばらくすると、熊の親子はどこかへ行ってしまった。

 そこで再び
「タオーーーーーーー!」
 と呼ぶと、遠くから、タオが一目散に駆けてきた。

 若くて元気だった頃のタオ。
 ふわふわで、むくむく太っている。

 勢い良く水を飲んで楽しそうに笑っていた。
 亡くなる前の調子悪そうな感じではなかったので安心した。
 よかった…。

 

 こちら都合の勝手な解釈ですが、このところ過激に忙しくてタオの遺影に話しかけていなかったので、心配して様子をみに来てくれたのかも。
 そうだとしたらタオは相変わらず優しい。

 

 話しは変わって盲導犬のこと。

 昨晩Tちゃんに
「前に聞いた盲導犬の話さ、やっぱり西さん、その人を警察に突き出すべきだったよ」
 と唐突に言われた。

 一瞬、なんのことか分からなかったけど、前に話した盲導犬のことがTちゃんも気になっていたみたいだ。

 

 10年以上前のこと…。

 友人のKと新宿で飲んで、終電近くの山手線で帰宅。
 シートに座ると、ぼくとKの正面に全盲の方が座っていた。
 全盲の方の足の後ろには盲導犬。
 ラブラドールだったと思う。

 他の上客に踏まれたりしない様に盲導犬を足元に伏せさせて、その前に(盲導犬をガードする様に)足を出していたので、全盲の方と盲導犬の関係の深さと厚さを感じた。
 盲導犬は、とても静かに、それこをいないかの様に伏せをしていた。

 次の駅で、酔っぱらったおっさんが1名乗車してきた。
 千鳥足で全盲の方の隣に着席。

 すると、足元の盲導犬に驚いた酔っ払いのおっさんは
「なんだこの犬? 電車に犬を連れてくるんじゃねーよ」
 と言って、足元で大人しく伏せをしている盲導犬を蹴った。

「こんな犬、電車に乗せんな。早く降ろせよ」
 と、酔っ払いのおっさんが言ったところで、怖くて震えている盲導犬を見てぼくの理性がブチっと切れた。

 ぼくが立ち上がると同時に、普段は大人しい友人のKも席を立つ。

 ぼくは酔っ払いのおっさんの胸ぐらを掴み、ぶん殴ってやろうかと思ったが(かろうじてそれは思いとどまり)
「うるせーんだよ。酔っ払い。静かにしろ!」
 と怒鳴ると
「なにがうるせーんだよ、このヤロー。犬が邪魔だって言ってんだろ!」
 とキレられた。

「大人しく伏せしてるだけだろ! 邪魔じゃねーんだよボケ!」 
 と返すと
「犬が邪魔だから降ろせっていってんだよ!」
 と言ってきたので
「邪魔なのはお前なんだよ。お前が電車から降りろクソヤロー!」
 と言い放ち、胸ぐらを掴んだまま、次の駅で酔っ払いのおっさんを電車から外にムリやり降ろした。

 懸命に仕事している盲導犬の気持ちを考えるといたたまれずに咄嗟に行動しただけ。
 別に正義の味方になろうと思ったわけではないが、車内では、乗客数人から拍手があった。

 

 これで終われば美談という気もするが、ここから予想外の展開。

 酔っ払いのおっさんをムリやり駅に降ろしたら、盲導犬の飼い主がぼくに文句を言ってきた。

「お前! なんであいつを勝手に電車から降ろした!」
「えっ? だって迷惑な奴だったから降ろして正解でしょ?」
「あんな奴は、駅員を呼んで、警察に突き出さないとダメなんだ。どうして勝手に降ろした!」
 と、怒り心頭な様子。

 盲導犬を蹴られた怒りでヒートアップしているのもあるだろうが、窮地を救ったはずのぼくが今度はメチャクチャ怒られる状況。意味分からん。 

 事態の収拾が困難だったため、次の駅で、今度はぼくとKが、逃げる様に電車を降りた。

 

 そんな話したのをTちゃんが覚えていて
「前に聞いた盲導犬の話さ、やっぱり西さん、その人を警察に突き出すべきだったよ」
 と、唐突にいいだしたのだ。

 

 世界には色々な常識や解釈があるのでなにが正解かさっぱり分かりませんが
「酔っぱらったおっさんを勝手に降ろしてしまったのは間違いだったかも」
 と、いまになって思う。

  

 しかし盲導犬に申し訳ないことは間違いない。
 いちばんの被害者は盲導犬だ。
 人間のために頑張って働いてくれているのに、人間に蹴られて、人間のいざこざに巻き込まれてしまうのだもの。

 なにが正解か分かりませんが、問題の本質は、被害者は盲導犬ということだと思う。