夜中に喉が渇いて目が覚めた。
 いや、目が覚めたら喉が渇いていた。

 階下に降りてキッチンへ。

 フリーザーから氷を取り出しコップに入れ水を飲む。
 渇きで気が急いて飲むペース以上にコップを傾けているので、水がこぼれる。
 夜中に寝ぼけているだけだが、砂漠を彷徨った旅人がオアシスを見つけて、水をこぼしながら貪り飲む風。

 氷が少なくなっていたので、製氷用の給水器に水を入れるために冷蔵庫を開ける。

 するとそこに、ヒカルが買ってきたOUCAのお持ち帰り用特盛アイスの紙パック。(こちら

「ん?」

 寝ぼけながらも、アイスのパックが冷蔵庫に入っていることに違和感あり。

「なにが入ってるんだ?」
 という漠然とした好奇心で特盛パックを取り出し、開けにくい蓋を開ける。

 

 バシャ…。

 

 こぼれたのは液状化したアイス。
 量はショットグラス1杯程度。

 足にもかかったので、床と、足と、跳ねて付着した冷蔵庫を拭いて掃除。

 

 この紙パック。
 和紙っぽい自然な素材感がステキだけれど、なにしろ摩擦抵抗が大きくて普段から開けにくい。
 凍っているアイスならこぼれることはないが、寝ぼけたおっさん+液状化しているという特殊な条件下では、ほぼ、間違いなくこぼれる。

 

 寝室に戻り
「風呂上がりにアイス食べた?」
 と聞くと
「食べてないよ」
 とのこと。

 そうなると、食後にぼくが食べたのが最後になる。
 どうやらぼくが間違って冷凍庫ではなく冷蔵庫に入れたっぽい。

「どうしたの?」
 と聞かれたので、先ほどの階下での悲劇をレポートすると
「あーあ」
 とのこと。

「それで、どうしたの?」
 と、さらに聞かれたので
「そのまま冷凍庫にいれといた」
 と告げる。

「それ、どうなるの?」
 と、さらに聞かれたので
「ミックスになって美味しいと思うよ」
 と答えたら、寝ぼけながら
「ほんとかなー」
 といっていた。

 

 抹茶。
 カボチャ。
 栗。
 きな粉黒みつ。

 

 2つの味が隣接する境界辺りを食べると、味が混ざり合ってデュアルテイストで美味しさ2倍ということがある。
 それを思えば、4つが液状化して混ざり合ったあとに再び凍らされたアイスはクアッドテイストで美味しさ4倍という可能性がある。(ない)