凄いヤツがいた。
 場所は地元のうどん店。
 ぼくは支持しているのだけれど、否定的な人がいると営業妨害で迷惑かけるので店の名は伏せる。

 昼に、夜に、なんども食べに行っているお店。
 今日も夕飯で伺った。

 すると10席×10席×2席で厨房を囲むようにコの字になっているカウンター(テーブル席なし)が2名空いてるだけ。
 ランチタイムで7〜8割の入り。夜は半分くらい埋まってるというのが常なので、今日はいまだかつてない客入りだった。

 大量のお客を捌く薄利多売系のお店ではないので、ここは注文が入ってからうどんを茹でる。
 ぶっかけ系などにトッピングする天ぷらも、注文が入ってから揚げるシステム。
 だからこそ旨いけれど、普段でも注文した品が提供されるまでは15分くらいかかるので、急いでいるときには避ける方がいい店かも知れない。

 ヒカルとぼくの入店で満席。
 うどんを食べている人が1/3程度。
 1/3はつまみながら呑んでいる人。
 1/3は手持ちぶさたでうどんの茹で上がり&天ぷらの揚がりを待っている人。

 店主とバイトくん(凄いヤツ)の2名で回しているシフトなので、着席してすぐに、混み過ぎ&人員不足て回ってない雰囲気は感じ取れた。
 事実、ぼくがお店にいた間だけでも
  ・お茶が出てこない×3
  ・箸がない×2
  ・オーダー間違い×1
  ・客からの「オーダー通ってる?」という確認
  ・キャンセル
 などが連発。

 ぼくは「こりゃ時間かかるな」と思ったのですかさずビールをオーダー。
 しかしビールが出てくるまでに10分(^^;

 ビールを呑み終わる頃に、先客が捌けたのでつまみとうどんをオーダー。
 すると、頼んだうちの2品が早くも品切れ。
 そんなことは今までなかったので、本当に今日は混んでいたのだと思う。
 テレビか何かに取り上げられたのかな?

 

 この凄いヤツが本当に凄かった。
 近年稀に見る逸材。
 この20年くらいのトップ3入り確定。

 なにしろ、ビールを提供するときはビールだけ持って行く。
 ホールから厨房に戻るときに、空いたお皿を下げることをしない。
「お茶くださーい」
 と言われると、お茶だけ持って行って、厨房に戻る。

 ぼくらの先客が捌けた後は、10人掛けのカウンター全てに片づけない食器が並ぶ。
 後客2名入店。
「2名様おねがいしまーす」
 と店主。
 すると凄いヤツが、2名分だけ片づけて、他の8名分は食べ終わったお皿を放置。

「彼はいつ、自主的に食べ終わった食器を片づけるのだろうか?」
 ということに興味がわいたが、ぼくが食事している間にそれはなかった。

 お爺さんが入店。
 お爺さんの席だけ食器を片づける。
 テーブルを拭く。
 するとお爺さんに、うどんにかける胡麻がまだテーブルにあるから、もう少しちゃんとテーブル拭いてくれと言われる始末。

 茶髪で20代前半の凄いヤツ。
 バイト初、飲食初、今日がデビューなのかも知れない。

 …とはいえ、使えなさ過ぎる。

 店主も
「次は2番さんのかき揚げ頼むぞ。ゆっくりでいいから、慌てるなよ」
 と、凄いヤツを思いやってる状況。
 焦るとミスを連発するのかも知れない。

 

 しかしこの凄いヤツってば、オーダーを取るときや、会計のとき、食べ物を提供するときの物腰が柔らかくて、全く憎めない。
 やや強面の風貌なのに、声のトーンが高くて、とても親切で、いいヤツに思えるから不思議だった。

 食べ終わり間際。
 ぼくの隣が2席空いてる状況で子連れの3名客が入店。
「少々お待ちください」
 ということで、子供を抱きながら立って待っているお母さん。

 忍びなくなったので、お店から席移動のお願いをされる前に自主的に横に移動。
 …しかし、片づけてもらわないと移動できないので
「すいません。席をズレるから、ここ片づけてください」
 と申し出たら、しっかり片づけてくれて3名席を確保。
 子供を抱いたお母さんから
「すいません。ありがとうございます」
 とお礼された。

 この時も、他の席も片づければいいのに、ぼくが移動するための席しか片づけない(^^;
 さらに後客2名きたのに、またまた2名分しか片づけないという凄いヤツ。

 ホールから厨房に戻るときに、できるだけ空いた皿を下げればいいのに。
 それに厨房からホールに出るときは、湯飲みと箸のセットを持ってきて、空いてる席にセットしておけばいいのに…。
 そのあたりに全く気がつかない模様。

 不慣れでアホで使えないヤツなのかも知れないけれど、彼の物腰の柔らかさと、メチャクチャ混んでるのに笑顔を絶やさず、こっちが苛々するくらいのスローペースでオーダーするお爺ちゃんの注文をニコニコ待ってる彼(凄いヤツ)を支持します。

 効率だけが全てじゃないもんね。

 

 …が。

 お会計のときに
「野菜ぶっかけと、カレーうどんで○○○○円になります」
 とのこと。

 えっ!?

 ぼくのビール、君が運んでくれたじゃん。

「ビールも呑みました」
 と伝えると
「すいません。えーと、野菜ぶっかけと、カレーうどんと、ビールですね…」
 とのこと。

 えっ!?

 ビール3杯呑んだし、つまみも頼んだじゃん…。

 仕方ないので、注文した品を、全て自己申告。

 そしたら
「時間もかかってしまってすいません」
 と詫びを言われたので
「忙しくて大変だね。頑張ってね」
 と声をかけてみた。

 すると
「ありがとうございました」
 と、ニコヤカに言われた。

 その屈託ない笑いを見てると、腹も立たない。
「そんなことで苛々している方が悪いよね」
 というキモチになった。

 お店を出るとき、店主さんがもっと丁寧に詫びてくれていたけど、全く問題ないので(あるけど)大丈夫です。

 

 単に苛々した話しで終わらせないところがレベル高い。
 凄いヤツがいたのです。

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